謎のコーベル その3

謎のコーベル 前回までのあらすじ
度重なる「コーベル」の単語の出現に戸惑うタカシは、ついにコーベルらしき男を見つけるも取り逃してしまう。混乱し憔悴しきったタカシはさらにゲームセンターウィチカの爆発事故を目の前にし呆然とする。そして自分が爆弾犯扱いされていることを知り絶望に暮れるのでありました。

自分が警察に追われていることを知ったタカシは恐々戦慄しました。もし捕まって問いただされた場合、一体何と説明すればいいのだろうか。「コーベル」なんていうふざけた単語を連呼して説明したところで怪しいのは完璧に自分ではないか。

いよいよ追い込まれたタカシは、自分がこの境地から脱するための策を練り始めます。そして、そもそもの始まりは親父からコロッケパンのお使いを頼まれたことにあることを思い出しました。コーベルらしき男がコロッケパンを持っていたことを考えると、やはり鍵はコロッケパンにあるのかもしれないとタカシは推理し、再び滝川へコロッケパンを買いにゆく決意をするのでした。

滝川への道中、タカシは「コーベル」という単語に思いを巡らせ、あのふざけた単語は「コロッケ」と「ベーカリー」が合わさった響きに聞こえなくもない感じが薄っすらとしてきたのでありました。もしかしたら「コーベル」とは滝川のコロッケパンの名前ではないかとも思え、ますます混乱するばかりでした。何なんだよコーベルって。

滝川へはタカシのいた地区から3駅ほどで、タカシは着くやいなや一直線に予め地図で調べておいた「滝川ベーカリー」へと足早に向かいました。滝川ベーカリーは商店街のはずれにある小さなパン屋で、木造建築にトタン屋根という見るからに古い店でした。

店先には何故かアーケードゲームの筐体が置かれていて、2人組の中学生が遊んでいるのがタカシには妙に不吉に感じられました。さらに店の壁には何故か松崎しげるのポスターが貼ってあり、色褪せて肌の色が白く見えたのも何やら嫌な予兆をタカシに感じさせたのだそうです。ほんとかよ。

その店を前にタカシは一呼吸置いて、自分が取るべき行動について思案しました。もしかしたら店主がコーベルの可能性もあるのですから、迂闊な行動はとれません。恐る恐る中を覗いてみると汚く狭い店内に10種類ほどのパンが並んでいるのが見え、そしてカウンターの向こうの座敷に座っている人物を見るとおもわず飛び退いたのでありました。

(もはや意地だけで続く)